2015年12月22日火曜日

Processingを使った絵画の設計

Processing Advent Calender 2015参加記事

(in English)

こんにちは。私はハヤマトモエという名義で10年ほど前から絵画制作をしてきました。ここ2年ほどジェネレイティブな手法を取り入れた新たな作品を作るため、試行錯誤しています。来年3月26日から4月30日までタカシソメミヤギャラリーという所で個展をするのですが、そこで展示する作品をすこし紹介させていただきます。

 photo popcorn_B4.gif
"Popcorn"(2005) 
まず私が今まで作って来た作品について簡単に紹介させてください。私の作品の大きな特徴は、シールの切り貼りによってできていることです。初期の作品では、ミニ四駆の装飾用ステッカーを平面に貼り合わせることによって絵を描いていました。この作品シリーズを出発点に、部分ごとに分けて描かれた模様・タイポグラフィ・エフェクトをカッティングシートに切り出し、それらを貼り合わせて絵を描く、という技法によって作品を作ってきました。絵の具をキャンバスに塗って絵を描くように、ここではシールを平面上に貼りあわせることで絵を描いています。グラフィティでも同様に貼り絵を使った方法で絵を描く(貼る)ことがあり、この技法は「ペイスティング」とも呼ばれています。

私の絵で描かれている「かたち」が生まれるプロセスを明確にし、その手続きをアルゴリズムにすることで、より幅の広い表現が可能なのではないか?これを動機として私はジェネレイティブな手法の可能性を探求しています。例えば、「これは自分の絵だ」といえるような「かたち」の本質はどこにあるのか。私の絵は、記号的な意味を排して分解すると、個別のパーツに分解することができます。それらを組み立てて総体としての「かたち」を構成するとき、そこには感性や手癖といった非論理的(アルゴリズム化困難)な基準が介在します。この絵が「私の絵」たらしめているのは、まさしくそういった非論理的なものを含んでいるからです。そういったものも含めてうまく「かたち」を生成するプラットフォームを作ることを目標としています。

『代謝建築論』p.14
このような「かたち」のプロセス論は建築では古くから議論されてきました。メタボリズムの建築家菊竹清訓は著書「代謝建築論」にて、「かたち」を作り出すには「か」「かた」「かたち」の3段階があるという方法論を提唱しています。これによると、構想的段階(本質的な核となるイズム)として「か」があり、次に技術的段階(実体にするための技術的媒介)として「かた」があって、最終的に形態的段階である「かたち」になる、この3段階のプロセスによって「かたち」の生成を捉えることができます。またこのプロセスを逆に辿ることによって「かたち」を認識することが可能であり、認識と実践を繰り返すこと(「か」「かた」「かたち」の三角形の頂点を行き来すること)で「かたち」の設計がなされている、と考えることができます。

この「かたち」のプロセス論は、『代謝建築論』の当時は理論的なアイデアに過ぎなかったかもしれませんが、Rhinoceros+Grasshopperなどによるアルゴリズミックデザインの発達によって、現在では実践的に有効な方法論となりました。つまり「かた」の部分をアルゴリズムで記述してコンピュータを走らせ、「かたち」を生成するのです。アルゴリズムにパラメータ変数を加えてそれを動かせば、無限の「かたち」の可能性からジャストな「かたち」を選択することによって、「かたち」を作り出すことができます。こういったアルゴリズミックデザイン以降の「か・かた・かたち」の方法論は松川昌平著「設計プロセス進化論」(『設計の設計』収録)によってアップデートされています。

この「か・かた・かたち」の方法論を絵画制作に取り入れるとどうなるでしょう。次のように考えることができます。
  • 「か」: 絵の本質、作家性、その作家の絵だとアイデンティファイさせるもの
  • 「かた」: パラメータ変化可能な描画アルゴリズム、データを物体にするまでの手続き
  • 「かたち」: 最終的な作品形態
「かたち」 "The deadly sin" (2016)
この「か」に当たるものは、感性の領域にあるもので、それを明確に記述(プログラム)するのは難しいでしょう。ですので、
「か」→「かた」→「かたち」
という方向で作るのは困難だと思われます。そもそも作品に「本質」があるのか、というのがポストモダン以降の作品制作の基本姿勢でしょう。

絵画の制作には、まずは作品の「かたち」からさかのぼってその「かた」を見出し、パラメータ変化させて生まれる無数の「かたち」の中からいいものを選ぶ、つまり
「かたち」→「かた」→「かたち」
の方法が自然なのではないかと思います。取捨選択されたもののなかから「か」が浮かび上がる、と捉えるべきでしょう。

今回の作品制作では、今までの私の作品の「かたち」から、その「かた」をProcessingでプログラムすることから始めました。今までの作品に爆破型の「かたち」のシリーズがあるのですが、これをモデルに描画プログラムを組みました。左のフェイダーをいじることで、かたちをパラメータ変化することができます。
「かた」 Processingによる描画プログラム
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これをベクター画像データとして出力し、3Mのマーキングフィルム(カッティングシート)に切り出して貼りあわせた作品(「かたち」)が以下です。
 photo 2015-12-05-11.48.jpg
φ60cm ステンレス板にマーキングフィルム

 photo 2015-12-05-11.48.jpg
φ60cm 鉄板にマーキングフィルム
Processingの強みは、最終出力メディアの自由度が高い、ということです。上のようにベクター画像として出力できる一方、フォトリアリスティックなレンダリング(光や反射を計算して、写真の様な画像を描きだすアルゴリズム)のライブラリを使って画像を描き出してやると、同じ「かた」から異なる表現方法による「かたち」を生み出すことができます。

「かた」 Processingによる描画アルゴリズム
rendered image 1

rendered image 2

 photo 2015-12-18-12.jpg
560mm×457mm ラムダプリント出力に額装
来年の個展ではProcessingで生み出した「かたち」をテーマに、ペイスティングと写真の作品を展示予定です。どうぞよろしくお願いします。

ハヤマトモエ個展 『絵画の設計』
2016年3月26日(土)~4月30日(土) (予定)
Takashi Somemiya Gallery
〒112-0014 東京都文京区関口1-24-8
TEL 03-3267-0337